相続増税、来年1月から 金融商品や対策セミナー盛ん

2014年10月7日07時35分 Asahi から

 来年1月1日から、亡くなった人の遺産を受け継ぐ際にかかる相続税が増税になる。遺産のうち、課税対象となる金額が増えるので、相続税を納める必要が新たに生じたり、納税額が増えたりする。金融機関などは「対策セミナー」を相次いで開き、節税につながる金融商品を売り込む。

「自分は資産家ではないと思ってる方ほど準備がなく、トラブルになります」。横浜市中区で2日、明治安田生命が開いた相続セミナーには60代を中心に80人が集まった。神奈川県藤沢市から来た男性(81)は「税制改正で、相続対策しなければならない立場になった。今から備えておきたい」と話し、真剣な表情で講師の話に聴き入った。

明治安田生命の場合、4~7月にセミナーを194回開き、6601人が参加。昨年同時期と比べると参加者は2・4倍だ。

今回の相続増税は2013年に決まった。低所得者の方が負担感が重い消費増税に合わせ、裕福な人により多くの税負担を求めてバランスを取る狙いがある。

最大のポイントは、相続する資産額から非課税枠として差し引ける「基礎控除」の額を4割減らし、より多くの人に相続税がかかるようにしたことだ。

たとえば、遺産を配偶者と子ども2人が受け取る場合。今は、家や預金などを合わせた相続資産が8千万円までは非課税枠として控除されるため、相続税は納めなくて済む。しかし増税後は、非課税枠が4800万円に縮み、5千万円の相続でも税負担が発生する。

ただ、亡くなった人が住んでいた家に相続人が引き続き住む場合や、相続人が配偶者や未成年の場合などに税負担が軽くなる仕組みもあり、実際の納税額は条件によって変わる。

相続税は、「家を売らないと納税できない」などの批判を受けて減税されてきた。基礎控除が増えたことで対象者が少なくなり、「資産格差が次の世代に固定化されやすくなっている」といった懸念が出ていた。今は相続税がかかるのは「亡くなった人100人あたり4人」だが、増税後は「100人あたり6人」まで増える見込みだ。

■生保販売額が急増

遺産のうち預金や土地は課税対象になるが、一定額までの死亡保険金や寄付金などは非課税となる仕組みがある。生前に子や孫に資産を贈与すると、贈与税はかかるが相続税より税負担が軽くなるケースもある。

金融機関などは、こうした「節税」につながる仕組みを使い、保険などの金融商品の売り込みに躍起だ。

死亡保険金は、相続人1人あたり500万円まで非課税となるため、金融機関各社はとくに生命保険の販売に力を入れる。野村証券では4~6月の生命保険の販売額が前年同期の3倍近くに増えたほか、SMBC日興証券も4月から直近までの販売額が、約5倍に伸びたという。大和証券は来年1月から、全国21本支店に専門の担当者を置いて、生命保険や不動産などの活用方法を提案する。

信託銀行が力を入れるのは生前贈与のメリットを生かした商品だ。孫の教育資金のために生前贈与すると1500万円まで税金がかからない仕組みを生かした「教育資金贈与信託」が主力で、業界団体によると昨年4月の販売開始から約1年半で、契約数は8万3千件になり、預かった財産は5600億円を超えた。

野村資本市場研究所の試算によると、高齢化で亡くなる人も増えるため、相続される資産は2030年までに計1千兆円超と見込まれるという。宮本佐知子主任研究員は「相続税関連の市場は大きく、さらなる拡大も予想される」といい、金融機関の富裕層取り込み競争は激しくなりそうだ。

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