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ソフトの令和対応 どうする?

令和から平成へバック?

令和から平成トラブル:ローソンATMで北陸銀行扱い向けのトラブルだそうです。

事業者の方、心配ですよね。業務ソフトは西暦に変更した方が無難でしょう。元号のために余計な経費はかけられません。もともと、西暦でプログラムは動いており、平成時代のソフトは元号表示では読み替えをしているだけですから、読み替えをやめれば、大抵のソフトは問題ないはず。

 

「令和」、ぬぐえぬ違和感 中国思想史専門家が読み解く

小島毅・東京大教授 写真・図版2019.4.10朝日新聞 から

新しい元号となる「令和(れいわ)」は、1300年以上ある日本の元号の歴史の中で初めて「国書」が典拠とされた。出典から外れた中国古典の専門家はどう受け止めているのか。中国思想史が専門の小島毅・東京大教授は、いくつもの違和感を指摘する。

 ■読み「りょうわ」では/国書強調、伝統の成り立ちを軽視

政府は新元号の出典を『万葉集』巻五「梅花(うめのはな)の歌三十二首并(あわ)せて序」の「初春(しょしゅん)の令月(れいげつ)にして、気淑(よ)く風和(やわら)ぎ、(後略)」と発表した。小島さんが最初に違和感を指摘するのが、新元号の読み方だ。「令」を漢音で読めば「れい」だが、比較的古い呉音(ごおん)なら「りょう」だ。小島さんは「当時の法制度は『律令(りつりょう)』。皇太子皇后の出す文書は『令旨(りょうじ)』。大宰府で『万葉集』の観梅の宴を主催した大伴旅人(おおとものたびと)が想定したのは呉音だっただろうから、『りょうわ』でもよいのでは」という。アルファベット表記についても「Reiwaより実際の発音に近いLeiwaにしたらどうだろう」という意見だ。

小島さんは、漢字2字の組み合わせにも異を唱える。「初春令月、気淑風和」から意味をなす2字を選ぶなら「淑和」もしくは「和淑」だという。「令」は「よい、めでたい」という意味で「月」を修飾する。「和」は「(風が)穏やかになる」という意味。「令と和には直接の関係がなく、結びつけるのは無理がある」。『書経』の「百姓昭明、協和万邦(百姓〈ひゃくせい〉昭明にして、万邦〈ばんぽう〉を協和し、〈後略〉)」に基づく昭和も二つの句にまたがるが、国内を意味する「百姓」と外国を意味する「万邦」が対になっているので意味は通る。これに対して「令和は無理やりくっつけている感じがする」という。

小島さんは、観梅の宴で詠まれた歌の題材も気がかりだという。「梅花の歌」序文は「古今」の「詩」(中国の漢詩)に詠まれた「落梅之篇(のへん)」に触れる。「咲き誇る花ではなく落ちゆく花。縁起がいいと思う人は少ないのでは」。32首のうち旅人の歌は「吾(わ)が苑(その)に梅の花散るひさかたの天(あめ)より雪の流れ来るかも」。「梅が散る様子を雪にたとえており、寒々しい時代になるとの解釈もありうる」と小島さん。

歴代元号には、為政者の理念やいい時代の到来への期待が込められてきた。元号を選ぶ際には、平安時代以来、学識がある家柄の者が漢籍から複数の候補を挙げる「勘申(かんじん)」を経て、公卿(くぎょう)(上級貴族)が候補を審議する「難陳(なんちん)」で様々な角度から議論した。小島さんは「難陳になれば『縁起がよくない』と批判を浴びたはず」とみる。

出典を「初の国書」という政府の発表はどう考えればいいのか。

新元号の発表直後、多くの専門家が「梅花の歌」序文のお手本として、中国の古典である王羲之(おうぎし)の「蘭亭序(らんていじょ)」や、詩文集『文選(もんぜん)』の張衡(ちょうこう)「帰田賦(きでんのふ)」からの影響を指摘した。『古事記』『日本書紀』『万葉集』が出典だと主張しても、中国古典にさかのぼる可能性が高い。小島さんはその理由を「日本独自の元号といっても制度自体、中国から学んだもの。日本の文学は中国古典に多くを学び、発展してきた」と解説する。

小島さんの目には、「初の国書」という日本独自の歴史や文化をわざわざ強調する政府の姿勢が、大陸伝来の文化を基盤とする日本の伝統の成り立ちを軽視しているかのように映るという。そもそも大伴旅人が観梅の宴を開いた大宰府は、唐や新羅の使節が訪れて交流した場所でもある。

元号は中国や日本に限らず、「東アジアの漢字文化圏全体が共有する伝統だ」と小島さんは強調する。19世紀以降の帝国主義と革命、近代化とナショナリズムの時代を経て、いま元号の制度が残るのは日本だけとなった。「日中戦争の最中も昔の中国文明や儒教、漢詩の伝統には深い敬意が払われていた。今回の政府の説明でも、中国古典の『文選』と国書『万葉集』のダブル典拠とすれば、東アジア友好のメッセージが伝わったはずなのに」(大内悟史)

こじま・つよし 1962年生まれ。専門は中国思想史。著書に『天皇と儒教思想』『儒教が支えた明治維新』など。