一人あたりGDPに見る生産性凋落

世界の一人あたりGDP は捉えた時点での変動が大きく様々な分析が出ています。そこで、充分な経年期間を丁寧に分析してみると、ある明確な傾向が見えてきます。

1989年平成1年には日本はアメリカを抜いて先進国で1番でした。その後に曲折はありますが1995年(地下鉄サリン事件、円高で1ドル70円台などとなった年です)にピークの43,118ドルをつけて以降、足踏み状態が続いています。

現在はG20国の中でも最下位に等しく、G7の中でかろうじてイタリアの上にあります。左図を拡大してよくご覧下さい。現状は1995年平成7年の43,118ドルに届いていない。太赤が日本、太青がアメリカです。よく見ていただくと解りますが、日本は先進国の中で貧しい方向に確実に向かっています。グラフは国連統計(National Accounts – Analysis of Main Aggregates (AMA)) をもとに作成したもの。

GDPは、技術革新と労働人口に影響されます。2012年までは円高に支えられて2番ピークの48,302ドルをつけますが、それ以降、政権が代わっても、足踏み状態が続いています。対するアメリカには大きく水を開けられています。アベノミクスは失敗と一概に決めつけることは出来ませんが、ゼロないしマイナス金利政策下では諸手を挙げて成長の果実が得られているということにはなりません。東京オリンピックまでは、だましの成長を喧伝するでしょうが、その反動は消費税のUP も重なり大きなものとなるでしょう。その危険を回避するためには、政策変更の軌道修正が必要となるでしょう。

いま政治で大切なことは、生活の基盤から持続的な国民経済はどうあるべきかを党派を超えて議論することではないでしょうか。あらゆる面で社会制度は’金属疲労’しています。地域社会に生きる市民は、地域の問題に関心と監視を強め、頓挫した2大政党制を埋めるための努力が必要です。1強多弱は栄枯衰勢のたとえのようにすぐに壊れます。アンチテーゼとしてMMT新経済政策を唱える人もおりますが、ただでさえ問題の借金経済を雪だるま化させるだけです。超高齢化時代の経済は入りを計って出ずるを図ることが原則で、老人層も頭を鍛え技術革新を目指すことではないでしょうか。

そのための一つのキーワードは、憲法における地方自治の拡充、加えて2元代表制の見直しに伴いシニアパワーの活躍・活動を促進することでしょう。これらの動きは、地域政党化が進み、新しい2大政党の1翼へと発展しうる可能性を秘めています。国民の半数が不満とあきらめを抱えた現状打破には、国民主権を実感できる地方経済・地方組織の活性化がまず必要ということになるのではないでしょうか。

年金の将来を考える

参議院選挙の争点の中に年金問題がありますが、国民ががあらためて生存のための労働の価値・意味を理解する良い機会ということではないかと思います。年金受給者は既得権として考えるだけでなく、何らかの形(就労を含む経済活動に参加することも含め)で付加価値の創造に積極的に参画することが不可欠となった時代に直面しています。そこで、現在の老齢年金が残高の状況を含めてどのような状況にあるのかを整理してみました。

老齢年金残高の推移

低成長経済下、年金の保険料収入が生産労働人口の減少に伴い減っています。年金額を現役時代の賃金の60%台を確保する為に、保険料を上げればよいというやり方では年金行政を維持できないことは火を見るまでもなく明らかです。このため現在は、あらかじめ保険料収入の上限を見通した上で、年金額を確保するという方式に変わってきています。

つまり高度成長時代の給付水準60%台のままというわけではなく、物価や賃金が上がっても、年金はそれよりも上げ幅を下げ(現役世代の賃金の上げ幅と年金額の上げ幅の差を広げ)、年金額の割合は長期的に50%に近づけるというマクロ経済スライド調整が今は導入されています。

マクロ経済スライド調整というのは、少子高齢化による年金受給者の増加で生じた年金給付の負担増と、被保険者の減少による負担能力の減少を考慮の上で、年金額を自動的に調整するものです。しかし、年金受給者の受け取る割合がいきなり50%にまで直線的に下がっていくというものではありません。(経済成長が止まれば、限りなくそれに近づくでしょうから、100年安心というわけでもありません)

現状では、例えば左図ならびに下表のように物価が1%上がって、賃金が0.6%上がった時に、マクロ経済スライド調整が0.5%なら、賃金の0.6%から0.5%下げて0.1%の年金の伸びにするというものです(名目上は下がりませんが実質では下がります)。賃金幅にできないのは負担者が人口減少で減るためです。

物価変動率 2018年の物価変動率 1.0%
名目手取り賃金変動率 2018年の物価変動率1.01 X 実質賃金変動率(2015~2017年度の平均)0.998 X 2016年度の可処分所得割合変化率0.998 0.6%
スライド調整率 公的年金被保険者数の変動率(2015~2017年度の平均)1.001 X 平均余命の伸びを勘案した一定率0.997 ▲0.2%
未調整分のスライド調整率 2018年度分の繰り越し ▲0.3%
年金改定率 0.1%

ところで最初の老齢年金残高の推移画像を拡大してみて下さい。年金残高は簿価ベースですが、平成1年73兆円→平成11年144兆円から→平成29年119兆円(時価ベースでは161兆円)と変遷しています。GPIF年金機構が保有する株式を売れば、時価ベースで伸びているという理屈もありますが、実際には売ることはそう簡単ではありません。

経済が堅調であれば良いですが、インフレターゲットをなかなか達成できない経済与件が山積している中、国民の貯蓄性向が極端に高い我が国では、投資性向が高まらない限り、株価の上昇は望めず(平成の初め頃の東証における1日の取引株数は20億株を超えていましたが、現状はその半分にもなっています)、経済成長は、国民参加で図る必要があり、地方の政治を含めた民力を高める試みが大切ではないだろうか。75歳を後期高齢者とする定義なども、この30年で平均寿命が10歳は延びていることからも85歳に変更していくことも必要ではないだろうか。

例の老後の資金2000万円は、個々人の問題で差ほど気にする事ではありませんが、不労所得の議員や、行政の無駄使いに目を向け、福祉に回すことに目を向けていくことの方が大切かと思います。またマクロ経済スライド方式は年金支給の公平感に十分に手をつけてはおらず、高額受給者に対しての減額方式の見直しなども考えて良いのではないだろうか。

2019年現在の年金支給月額の最新情報は、国民年金支給額の平均が55,464円、厚生年金支給額の平均が147,927円となっています。合計20万円です。

マクロ経済スライドはよく練られたスキームと思いますが、所得代替率をきめ細かく運用するという視点も大切と思います。

公的年金の給付水準は所得代替率という考えに基づき算出されます。所得代替率とは左図のように、給付開始時点の年金額を、現役世代の平均手取り収入額(賞与込み)に対する割合で示したものです。現状ではその値が平均値で約60%です(所得の高い人は約50%で止まっています。)。

一般に高所得世帯は個人年金や貯蓄などで老後に備えることができますが、所得の低い世帯は十分な老後の備えをすることが困難です。そのため公的年金では、世帯構成や現役時代の所得の違いを考慮した運用が一応は行なわれています。
高額受給者の所得代替率は一定の水準以上では下限を外し、低所得者の原資にまわすなどの考えがあっても良いのではないだろうか。

認知症

3回にわたる認知症記事です。共助社会の自覚を持つためにも、共助の元である市民の連帯、平たくいえば党派を超えた公共の組織作りを市民側から創り上げるということではないだろうか。


問われる「認知症先進国」の知恵 介護、近づく限界点
認知症と生きる(上) 2019/7/9 1:30 情報元 日本経済新聞 電子版

男性の妻(中)は認知症となり、目を離すとすぐに家からいなくなってしまう(東京都府中市)

認知症対策を強化する政府の新しい大綱が決まった。「誰もがなりうる」として「共生」に加え、初めて「予防」も目標に掲げた。長寿社会を実現した結果、認知症の有病率が世界で最も高い”先進国”となった日本。認知症と生きる知恵の模索が続いている。

「戻ってこねえな……」。6月下旬、東京都府中市の自営業の男性(87)は自宅の縁側に腰掛けて庭先にある門を見つめ、ため息を深くついた。1時間ほど前に家を出た認知症の妻(82)は夕暮れが迫るなか、行方が分からないからだ。

妻が昼夜を問わず、さまよい始めたのは5年前。約20キロ離れた川崎市内で見つかったこともある。1年半前に認知症と診断され、特別養護老人ホームの入所を申し込んだが断られ続けている。対処しきれなくなった男性は妻の帰りを待つだけの日々を過ごす。

経済協力開発機構(OECD)の比較では認知症の有病率(2017年)は日本が2.33%で最も高い。警察庁によると、認知症で行方不明後に死亡が確認された人は18年までの5年間で3割増え508人。介護・看病疲れで起きた殺人事件は31件、自殺した介護者は230人に上る。

「家族介護から社会的介護へ」を掲げ、2000年に導入した介護保険は当初3兆6千億円だった給付費が17年度には約10兆円と2倍以上に増加。介護サービスは拡充したものの、制度の網から漏れる人は多い。

「家族のケア」という見えない費用を加えた認知症の社会的コストは30年には21兆円を超え、15年から1.4倍に増える――。慶応大学の研究者らの試算がきっかけの一つとなり、政府は6月、認知症の人が暮らしやすい社会をつくる「共生」に加え、認知症を減らすため「予防」を初めて対策の柱の一つに据えた新大綱を決定した。

30ページを超える新大綱に盛り込まれた対策は膨大だが、実現が容易でないものも多い。その一つが「介護人材を25年度に245万人確保する」だ。

重度の認知症の人などを受け入れる特養はベッドがあっても人手が足らず入所できないケースもある。独立行政法人の福祉医療機構(東京・港)の17年調査では利用率が9割を下回る施設が3割弱あった。政府は特養などの受け皿を広げるため16年度から55万人増やすことを盛り込んだ。

だが北関東の施設で働く介護職員の女性(45)は「高い志を持つ若い職員は仕事量や低い賃金などで次々と現場を去っている」と嘆き、「絵に描いた餅にすぎないのでは」と懸念する。

認知症の高齢者が保有する資産も膨らむ。第一生命経済研究所は30年度に215兆円になると試算。一方で親族や弁護士が財産を管理する成年後見制度の利用者は18年末で21万8千人で低迷している。新大綱では利用を促す中核機関を全市区町村に新設する方針だ。

65歳以上の認知症は推計517万人(15年)。日本だけでなく、アジアを中心に急増する見込みだ。先駆けて対策を迫られる日本が、認知症の人の家族任せにせず、社会としてどう向き合うのか。各国共通の課題が突きつけられている。


認知症予防は「夢のまた夢」? 発症リスク診断に活路
認知症と生きる(中) 2019/7/10 1:30 情報元 日本経済新聞 電子版

「ご期待に沿えず申し訳ない」。エーザイの内藤晴夫社長は5月、決算発表の場で、期待されていたアルツハイマー型認知症薬の開発中止について陳謝した。中止を発表した3月には失望感が広がり、株価は3割下がった。「次世代の薬を何としても世に出したい」。内藤社長は新たな治療薬の開発に力を入れる。

エーザイは認知症の新たな治療薬の開発に力を入れる

アルツハイマー病の原因は各国の研究者が心血を注ぐが、いまだに分かっていない。全体の6割程度とみられているアルツハイマー型の治療薬は、原因と推定されているたんぱく質が脳内に”ゴミ”として蓄積しないようにして発症や進行を防ぐことを狙う。

だが米製薬企業バイオジェンは「原因となるゴミの種類はたくさんあった」として、1つの物質の蓄積を防ぐだけでは効果がないとみる。2000年以降、製薬会社約30社は治療薬の開発に6千億ドル(約65兆円)以上投じてきたが、予防に結びついていない。

日本では認知症薬として承認されている薬も、フランスは費用対効果の観点から公的保険の対象外とするなど、アルツハイマー型認知症の予防や治療効果に疑問が投げかけられている。

政府は5月、認知症対策の新大綱の素案段階で「70代で認知症の人の割合を10年間で1割減らす」という数値目標を掲げた。だが「予防法は確立していない」「発症した人が責められる」など懸念が噴出したため、6月に決定した大綱では「参考値」にとどめた。

予防は夢のまた夢なのか。期待が寄せられているのは「防げるはずの認知症を防ぐ」取り組みだ。

17年に英医学誌ランセットに掲載された研究では、複数の論文を統計的な手法で解析。遺伝的な要因は7%にすぎず「認知症の35%は予防できる」と指摘し、話題を呼んだ。

英研究チームによると、最大の要因は聴力低下で、耳が遠くなると9~17年後に認知症になる傾向があった。中等教育(12~14歳)の未修了者もリスクが高く、研究チームは「教育を受けることで認知機能が高まると同時に健康に気を配るようになる」と説明する。

「脳を鍛える大人の計算ドリル」で「脳トレ」ブームを起こした東北大加齢医学研究所の川島隆太所長は「認知症の予防は方向として可能なはず」とみる。

5月中旬、世界保健機関(WHO)が初めて作成した認知症予防ガイドラインでも認知機能の低下や認知症のリスクを低下するため「運動」と「禁煙」を「強く推奨する」とした。

予防の効果を科学的に証明するためには時間を要する。WHOも運動と禁煙のエビデンス(根拠)の質については「低い」と評価しており、今後の長期的な研究が不可欠となる。

注目されているのが早期診断だ。国立がん研究センターと国立長寿医療研究センターは、血液でがんの早期発見を目指して「マイクロRNA」を測る手法がアルツハイマー型、脳血管性などほとんどの認知症の発症を予測できることをみつけたという。

早期から対応できれば、生活習慣病が原因となる「防げるはずの認知症を防ぐ」ことも現実味を帯びる。


当事者参加で「共生」実現 自助・公助に限界
認知症と生きる(下) 2019/7/11 1:30 情報元 日本経済新聞 電子版

「認知症の人がここまでできるのか」。鹿児島県姶良市の介護事業所「共生ホームよかあんべ」には、地域住民からこんな声が届くようになった。施設を利用する認知症の人が、ヤマト運輸から業務委託を受けた荷物を配達する取り組みを1月から始めた成果だ。
認知症の人がメール便を配達し、地域住民とつながる取り組みも始まっている(鹿児島県姶良市)

認知症の人がメール便を配達し、地域住民とつながる取り組みも始まっている(鹿児島県姶良市)

配達するのはメール便で1日10件程度、近くの住民宅を回る。施設は受け取った委託費を配達した人に支払う。月2千~3千円になる給与で散髪に出かける人もいる。

メール便は手渡しで、あいさつも交わす。取り組みを提案した施設の代表、黒岩尚文さん(50)は「利用者は人の役に立ち、対価ももらえ、満足感が強い。日ごろからつながりがあれば、いざというときに声もかけやすい」という。

認知症が進んでも、人間らしさを尊重することが欠かせない。

福岡市が世界で初めて自治体として普及策を取り入れた認知症のケア技法「ユマニチュード」。考案したフランスの体育学の専門家、イブ・ジネストさん(65)は「たとえ認知能力が低下しても感情は残る」と指摘する。

ユマニチュードには、認知機能が低下している人には顔と顔を近づけてゆっくり話すなど、人間として重要な「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つを柱とする基本技術がある。実践した施設では、寝たきりの高齢者が立ち上がるなど効果が出ている。

フランスでは400超の施設が導入。ドイツ、カナダなどに次ぎ、2014年に日本に6番目の国際支部ができた。福岡市は一般市民も対象に技法を紹介する講座を開催。認知症の人と接することが多い市の福祉関係の窓口職員や救急隊にも広めている。

当事者らでつくる一般社団法人「日本認知症本人ワーキンググループ」は昨秋、「認知症とともに生きる希望宣言」を発表した。6月に政府が決定した認知症対策の新大綱に「本人からの発信支援」として明記されるきっかけになった。

同グループが同月下旬に都内で開いたイベントには約160人が参加、約30人は当事者だ。代表理事で鳥取市在住の藤田和子さん(57)は45歳のとき、若年性アルツハイマー病と診断された。「症状は進むと思うけれど、希望のリレーをつなぎたい」と訴えた。

イベントでは、認知症の人が地域社会の一員として参画している具体的な例として、和歌山県御坊市の「認知症の人とともに築く総活躍のまち条例」が紹介された。条例では市、当事者、関係機関だけでなく、市民のほか、企業や商店など事業者の役割を盛り込み、地域ぐるみで取り組むことをうたった。

厚生労働省研究班の推計では、認知症の人は30年には744万人、50年には797万人と65歳以上の5人に1人を超える。本人、家族、住民を含めると、誰もが向き合う認知症。社会的コストが急増する中、国や自治体の「公助」や、本人と家族の「自助」には限界がある。支える人、支えられる人の枠を超え、地域で知恵を出し合う「共助」社会が求められている。

前村聡、寺岡篤志、石原潤、川名如広、草塩拓郎、奥田宏二が担当しました。

投票力vs集客力

面白い分析です。自民は本当に強いのか 楽観できない「投票力」
論説フェロー 芹川洋一  2019/6/17付日経

の記事のとおりと思うが、自民と比肩しうる政党がない構図は変わらない。国民の半数を占める支持無し層をすくい取る視点からの政党の不在が政治の進化を阻んでいる。投票力は進化の決め手にはならず、護憲も原発も2項対立として不十分ならば、自由・民主に代わる新しい軸は何になるだろうか。

選挙を立憲民主で戦い当選した後に、訳の分からない野合会派名で議会に臨むご都合主義の議員を生む風土にも問題がある。無関心層を含めた再編は必須でしょう。


衆参同日選はどうやら、ないらしい。19日には党首討論が設定されている。野党は安倍晋三内閣の不信任決議案の提出を準備している。なお波乱の芽がないわけではないが、会期どおり26日に国会が閉幕し、参院選単独の戦いとなるのだろう。

12年に一度、統一地方選と重なり自民党には鬼門の「亥(い)年」の参院選だが、衆院選をぶっつけなくても勝てると判断したようだ。たしかに世論調査をみる限り、安倍自民党は盤石だ。内閣支持率は50%を超え、政党支持率も40%を上回る。野党の弱体ぶりは、いうまでもない。

今回は勝ちすぎた2013年の参院選の改選だから、自民党はそのときの65議席は下回っても、16年選挙の56議席ぐらいは確保するだろうとの見方がもっぱらだ。

自民党として敗北をきっすることはないと踏んでいるに違いない。

そうした選挙予測に、異を唱えようというわけではないが、世論調査と選挙結果の間には、過去の経験からどうも微妙なずれがある。

そんな思いでいたとき、外務省の鈴木量博北米局長に話を聞く機会があった。

外務省は16年の米大統領選挙でそれを痛感した。事前の世論調査では決して優位ではなかったのにトランプ大統領が誕生したからだ。

そこでどうしたか。鈴木局長によると、在米大使館の議会班がさまざまなデータをもとに、投票結果を左右した要因を分析した。その結果、新たな指標を考え出した。

人種別(白人・黒人・ヒスパニック・アジア系)、年齢別(4分類)の有権者人口の割合と、それぞれの投票率をかけ合わせる。

そこから、どれだけの人が実際に投票したかの数字がはじき出せる。ある層を基準として比較すると、どの程度、人口の割合と投票率が投票に影響をおよぼしたかが見えてくる。それを「相対的投票力」と名づけた。

18年の下院選挙では、人種別でヒスパニックを1とすれば黒人は1.3、アジア系は0.38で、白人は何と7.59にのぼる。白人のパワーが桁違いに強いことがわかる。

年齢別は18~29歳を1として、ウエートがいちばん高いのは45~64歳の2.72。次が65歳以上の1.96、そのあと30~44歳が1.57だ。

中高齢の白人にアピールする訴えをしないことには当選がおぼつかないことが、はっきりと数字からみえてくる。

鈴木局長は「16年の大統領選挙でトランプ選対は、白人の強い投票力をしっかり考えて行動に移した。だから世論調査とは違う結果が出た」と分析している。

ひるがえって日本はどうか。相対的投票力の手法を借用し、その応用編を考えてみた。日本の場合、人種別はないので年齢別だけだ。

年代別有権者は、総務省の国勢調査による推計人口で17年現在の数。投票率は、総務省の外郭団体である「明るい選挙推進協会」が調べた16年参院選の年代別のデータだ。

調査時点にずれがあるが、傾向を調べたものと理解してもらいたい。18~19歳の部分が欠落しているのは適当なデータがないためで、お許しいただきたい。

年代別の有権者構成比と投票率をかけ合わせ、それを「投票力指数」とする。それをもとに相対的投票力を計算してみる。

20代を1とすると、30代は1.5だが、40代と50代は2.2になり、60代は2.8、70代以上は3.5と投票力は圧倒的だ。

高齢になるほど有権者数が多いうえに投票率も高いからおのずとそうした結果になってしまう。投票率は20代が35%なのに対し、60代は70%と倍だ。シニア層の政治的な影響力が大きくなるシルバー民主主義がいわれるゆえんだ。

実際の選挙は、有権者がどこに票を投じるかによって決まる。そこで用いたのが日本経済新聞社が19年5月に実施した世論調査の「投票をしたい政党」のデータである。

与党(自公)と野党(それ以外)で、それぞれの回答率の和に年代別の投票力指数をかけあわせ「実効的投票力」をはじきだしてみた。

20代は与党が2.1で、野党の0.8を圧倒する。50代までは与党に野党の倍以上の投票力がある。ところが60代は与党5.2、野党4.4と肉薄し、70歳以上も与党6.1、野党4.5とけっこう近づいてくる。

60代では「まだ決めていない」との回答者が15%いる。この層の内閣不支持の割合は支持を大きく上回る。もし不支持者が野党に投票すれば与野党はほぼ並ぶ。シニア層の実効的投票力をみる限り野党は決してあなどれない。

安倍首相は周辺に「この人たちを変えるのはむずかしい。人生の不満が政権に向いている。むしろ未来があって支持の高い若い人たちのボリュームをあげていきたい」と漏らしているらしい。

自民党の選挙対策はいかにして若い人に選挙に行ってもらうかだ。

逆もある。その昔「無党派は寝ていてほしい」と、非自民が多い無党派層は投票に出てこないでと本当のことを言って批判を浴びた首相がいた。それにならえば今は「老人は寝ていてほしい」ということになるのだろうか。

ところがどっこい、団塊の世代を中心にアクティブ・シニアの何と多いことか。自民党はたかをくくっていると痛い目にあう。

日本の競争力は世界30位

ロスジェネと高齢者増の問題にもかかわるが、今のまま放置して’高齢者’対策を疎かにしておっては、生産性の向上は図れない。若者のチャレンジ精神も育たない。働き方改革の本領は働かない’高齢者’を活用し生産性を上げることだ。75歳後期高齢者はおかしい。

【ジュネーブ=細川倫太郎】スイスの有力ビジネススクールIMDは28日、2019年の世界競争力ランキングを発表した。日本の総合順位は30位と前年より5つ順位を下げ、比較可能な1997年以降では過去最低となった。企業の生産性の低さや経済成長の鈍化などが理由で、アジアの中での地盤沈下も鮮明になっている。

調査対象は63カ国・地域。1位はシンガポールで、先進的な技術インフラやビジネス環境が高く評価された。一方、前年に1位だった米国は3位に転落。IMDは燃料価格の上昇やハイテク輸出の減少が米経済に打撃を与えていると指摘したほか、トランプ大統領の税制改革の効果にも懐疑的な見方を示した。

日本は判断基準となる項目別で、「ビジネスの効率性」が46位と低く、ビッグデータの活用や分析、国際経験、起業家精神は最下位と厳しい。IMDは企業の生産効率の向上に向け、働き方改革や人材開発を一層進める必要があると指摘した。「政府の効率性」も38位で、巨額の政府債務や法人税率の高さなどが重しになっている。

一方で、日本は環境技術やモバイルブロードバンドの普及、平均寿命などの評価は高い。

アジアではインドネシアの勢いが目立つ。総合順位は43位から32位に急浮上し、日本を猛追している。首都ジャカルタでは今春、同国初の地下鉄が開業するなど、インフラやビジネス環境の改善が寄与した。欧州では、欧州連合(EU)離脱に揺れる英国は23位と3つ順位を落とした。IMDは欧州の競争力は景気減速の影響で厳しくなっていると指摘した。

競争力ランキングは1989年から公表している。4つの項目を基準に、235の経済指標などを使い分析している。

競争力ランキング1位のシンガポールは技術インフラやビジネス環境が評価された=ロイター

競争力ランキング1位のシンガポールは技術インフラやビジネス環境が評価された=ロイター

ロスジェネと高齢者

ロスジェネの問題は高齢者の問題でもある。行政のスリム化と高齢者の身を切る改革無しには解決に向かわないだろう。掛け金の倍以上の給付を受けている実情には無理があろう。

2019.527 朝日(ロスジェネはいま エイジングニッポン:中)遠い結婚、少子・高齢単身


自分たちの世代が生きていくすべとして、結婚を焦っていたのかもしれない。関東地方に暮らし、中小企業でパートとして働く46歳の女性は思う。

東京・世田谷の閑静な住宅街に住み、専業主婦になり、子どもには海外留学をさせて――。そんな夢を持って33歳の夏に結婚情報サービスに入会した。「医師・歯科医、東大早ログイン前の続き慶卒、年収1千万円以上のいずれか」という「ハイスペック男性」コースで、入会金は男性より高く30万円ほどだった。

就職氷河期に社会に出た世代「ロストジェネレーション」。30歳を過ぎて母親が亡くなり、都内の家賃5万円弱のアパートで一人暮らしをした。派遣社員として企業のデータ入力作業をし、正社員並みに働いたが手取りは月20万円台前半だった。結婚は「豊かな生活へジャンプできる大きなチャンス」だと思った。

紹介された医者や経営者2、3人と会ったが、本当に楽しいと思える人はいなかった。結局、飲み会で知り合った年下の自営業の男性と40歳で結婚したが、セックスレスになり、価値観の違いにも気づいた。いまは離婚を考えている。

「男性に高い条件を求めていた当時は、『結婚を夢見る夢子ちゃん』だったのかもしれません。いまも独身の友達は多く、私のように子どもがいない夫婦もたくさんいる。早く結婚して子どもをつくるのが当然だった親の世代とは、家族のあり方が変わっています」

国内の婚姻件数は、ほぼロスジェネの親に当たる団塊世代が25歳前後だった1970~74年にかけ、年間100万組を超えていた。それが右肩下がりとなり、2017年には半分近い60万組に減った。50歳まで結婚したことのない「生涯未婚率」は、15年の国勢調査をもとにした分析では男性で約4人に1人、女性で約7人に1人になった。

ロスジェネは、団塊ジュニアや第2次ベビーブーマーといわれる大きな人口の膨らみを含む。この世代を不安定雇用に追い込み、加えて非婚化が進んだことで、第3次ベビーブームは起きなかった。

ロスジェネ世代でもある作家・活動家の雨宮処凛(かりん)さん(44)は、この世代の女性たちは「社会から見えにくい存在」だと言う。「昭和の日本では非正規雇用の女性も結婚することで家族に吸収されていた。今は1人で生きなければいけない女性が増えており、私も友人たちも、結婚せずに老いていく現実を突きつけられている」

■ひきこもり憂慮

少子化と同時に進むのが単身世帯の増加だ。山田昌弘・中央大教授(家族社会学)は、この世代が年を重ねて高齢単身者が増えることにより、社会的孤立が深刻化すると警鐘を鳴らす。

「男性は正社員のルートから外れたら、女性は正社員と結婚できなかったら、将来が描けない。ロスジェネの親の世代までは、配偶者や子が介護などの面倒をみたが、これからは頼れる人がいないまま高齢になる人が増えていく」

懸念されるのが、仕事や社会参加をせずに孤立する「ひきこもり」だ。40~64歳の中高年ひきこもりが全国に約61万人いるという衝撃的な推計を内閣府が公表したのは3月末だった。

中高年のひきこもりが社会問題として注目される背景には、人口規模の大きいロスジェネ世代が30代後半から40代後半にさしかかっていることがある。長くひきこもる40~50代の子どもを、70~80代の親が支える。いわゆる「7040問題」「8050問題」の深刻化もまた、この世代がかかわっている。

「労働環境の悪化もひきこもり増加の理由になっているんじゃないか」。昨年9月に都内であった「ひ老会」(ひきこもりと老いを考える会)のミーティングで、さとう学さん(41)は熱を込めて話した。ひ老会はひきこもりの高年齢化に直面する当事者や経験者らが集い、語り合う場だ。

さとうさんは計20年近いひきこもり経験がある。30代のとき、ひきこもりから脱して働いたパート先の会社で、自社商品の買い取りを強いられる「自爆営業」やパワハラの被害にあった。約5年で退職し、再びひきこもった。そんな自身の経験をふまえて言う。

「ひきこもりの中高年が働き始めたとして、そこに希望はあるのか。結婚もできず、給料もあがらず。それに耐えられるのか」

ロスジェネ世代の高齢化は、この国に大きな重荷を背負わせる。

■国も大きな負担

団塊の世代が75歳以上になる2025年問題はよく知られているが、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、65歳以上人口が最も多くなるのは42年、75歳以上人口のピークは54年だ。ロスジェネが超高齢社会の主役となる時期と重なる。

非正規化が進み無業者が増えたロスジェネ世代について、老後に生活保護を利用する人が増えることによる追加費用は17・7兆~19・3兆円に達する。そんな推計を08年にNIRA総合研究開発機構がはじき出している。

「高齢者の数を減らさなければ、この国の未来はありません」。昨年秋、75歳以上の貧しい高齢者に国家が安楽死を勧める10年後の日本を描いた短編映画が公開された。タイトルは「PLAN75」。オムニバス映画「十年 Ten Years Japan」の第1編だ。是枝裕和監督が総合監修した。

劇中では、テレビCMが「あなたの決断を全力でサポートします」「痛みや苦しみは一切ありません」と穏やかに安楽死を勧める。

「PLAN75」を撮ったのはロスジェネ世代の早川千絵監督(42)である。きっかけは、障害者施設の入所者19人が殺害された「やまゆり園事件」で感じた、命を選別するような社会の空気への憤りだった。

「このまま進んだら社会はどうなるのか、映画で提示したかった」と早川さんは言う。「不安定な非正規雇用で働いてきた人が年金を減らされ、自分でなんとかしろと放り出されたら、この映画のようなことはありうると思います。そうならない未来への希望も持っていますが」

ロスジェネ世代が高齢化する未来は静かに、刻一刻と、近づいている

賃金が上がらない 社会が歪んでいる

おめでたいプラチナweekのさなか、こんな笑えない報道が流れていた。日本の金融政策の根幹にもかかわる問題です。文字通り見れば、1997年以来2018年に至るまで賃金が下がっている。外国では上がっているのに。というもの。

BS-TBS 報道1930

国民の賃金がある意味で収奪されているとも見える。これを異常ないしおかしいと思わない者には関係ない話だが、健全な経済であれば、このようなことは起きない。日頃の生活の中で、働いている人にはこのデータへの実感があるであろうが、働いていない人がこんな状態にあるあることには無関心だとしたら大問題だろう。支えられる側が支えなくてはいけない時代というのも皮肉なものです。

平成時代をさかのぼる20年間、深刻なデフレ状態で賃金が上がらず、正常な物価上昇が機能しなかったということは確か。いくら、完全雇用が維持されている、経済は緩やかな成長を続けていると唱えてみても、空虚なもの言いではないだろうか。

根本の問題は、金融政策偏重のゼロ金利、それでも足りずにマイナス金利政策まで導入し、古典的な財政出動に頼り、政治・経済・財政の構造改革を怠り社会保険、社会保障制度の抜本改革を怠った結果、起きるべくして起きているのだと考えれば腑に落ちる。

令和の時代を刻んで行くにあたって、国民の覚醒は不可避だろう。政治はモラルを欠き、金融の出口政策も持たずに、ただひたすら日銀が国債を買い支え続けるのも限界点にある。そのひずみはどこかの時点でハードランディングしかないだろう。そのときのために、市民は、国民は防衛措置を講じておくことと、ただ唯々諾々の姿勢改め、もの言う姿勢が一層必要だろう。、政治家も自らのためにする姿勢を根本的にあらため、少なくとも定数是正によるスリム化が求められるだろう。

BS-TBS 報道1930

なお、これらのデータは実質賃金指数の推移の国際比較 – 全労連データによるものですが、ベースはOECD統計を基にしています。

詳細は全国労働組合総連合(全労連)調べ をご覧頂きたい。

この他、毎勤統計で問題となった厚労省のこちらの例でも、過去20年間の世帯年収の中央値は過去20年間に122万円も下落してい留ことが」報じられています。

この20年間に緩やかに推移したため大きな問題とならなかったが、格差指標の一つである公務員給与と企業格差は1.4倍と高度成長期とは逆転している異常事態で、経済成長の阻害要因との指摘もある。

浦安市の議員報酬は現在 手当等を含めて約900万円。議員にはそれだけの仕事をしてもらわないといけませんが、実際問題それだけの活躍をしている人は?です。

市の公共施設の利用料金をはじめとして今年から値上げが続きます。我々の税金がどのように使われるのか、政治に関心が無いからで済まされる状況ではありません。今回の市議選でも問題視がほんの一部に止まっていた、音楽ホールに30年間にわたり130億円も赤字補填に使うこと、子供図書館の建設問題など、税収には限りがあります。少子化の流れの中、ゆでガエル思考で先見性を持たない政治は、未来に向かって無責任な負の遺産を積み上げていくだけでしょう。市民は、もっと政治に関心を寄せ、自分の頭で他人任せにしない思考法を学ぶ必要があるのではないか。

コメント歓迎します。

ソフトの令和対応 どうする?

令和から平成へバック?

令和から平成トラブル:ローソンATMで北陸銀行扱い向けのトラブルだそうです。

事業者の方、心配ですよね。業務ソフトは西暦に変更した方が無難でしょう。元号のために余計な経費はかけられません。もともと、西暦でプログラムは動いており、平成時代のソフトは元号表示では読み替えをしているだけですから、読み替えをやめれば、大抵のソフトは問題ないはず。

 

「令和」、ぬぐえぬ違和感 中国思想史専門家が読み解く

小島毅・東京大教授 写真・図版2019.4.10朝日新聞 から

新しい元号となる「令和(れいわ)」は、1300年以上ある日本の元号の歴史の中で初めて「国書」が典拠とされた。出典から外れた中国古典の専門家はどう受け止めているのか。中国思想史が専門の小島毅・東京大教授は、いくつもの違和感を指摘する。

 ■読み「りょうわ」では/国書強調、伝統の成り立ちを軽視

政府は新元号の出典を『万葉集』巻五「梅花(うめのはな)の歌三十二首并(あわ)せて序」の「初春(しょしゅん)の令月(れいげつ)にして、気淑(よ)く風和(やわら)ぎ、(後略)」と発表した。小島さんが最初に違和感を指摘するのが、新元号の読み方だ。「令」を漢音で読めば「れい」だが、比較的古い呉音(ごおん)なら「りょう」だ。小島さんは「当時の法制度は『律令(りつりょう)』。皇太子皇后の出す文書は『令旨(りょうじ)』。大宰府で『万葉集』の観梅の宴を主催した大伴旅人(おおとものたびと)が想定したのは呉音だっただろうから、『りょうわ』でもよいのでは」という。アルファベット表記についても「Reiwaより実際の発音に近いLeiwaにしたらどうだろう」という意見だ。

小島さんは、漢字2字の組み合わせにも異を唱える。「初春令月、気淑風和」から意味をなす2字を選ぶなら「淑和」もしくは「和淑」だという。「令」は「よい、めでたい」という意味で「月」を修飾する。「和」は「(風が)穏やかになる」という意味。「令と和には直接の関係がなく、結びつけるのは無理がある」。『書経』の「百姓昭明、協和万邦(百姓〈ひゃくせい〉昭明にして、万邦〈ばんぽう〉を協和し、〈後略〉)」に基づく昭和も二つの句にまたがるが、国内を意味する「百姓」と外国を意味する「万邦」が対になっているので意味は通る。これに対して「令和は無理やりくっつけている感じがする」という。

小島さんは、観梅の宴で詠まれた歌の題材も気がかりだという。「梅花の歌」序文は「古今」の「詩」(中国の漢詩)に詠まれた「落梅之篇(のへん)」に触れる。「咲き誇る花ではなく落ちゆく花。縁起がいいと思う人は少ないのでは」。32首のうち旅人の歌は「吾(わ)が苑(その)に梅の花散るひさかたの天(あめ)より雪の流れ来るかも」。「梅が散る様子を雪にたとえており、寒々しい時代になるとの解釈もありうる」と小島さん。

歴代元号には、為政者の理念やいい時代の到来への期待が込められてきた。元号を選ぶ際には、平安時代以来、学識がある家柄の者が漢籍から複数の候補を挙げる「勘申(かんじん)」を経て、公卿(くぎょう)(上級貴族)が候補を審議する「難陳(なんちん)」で様々な角度から議論した。小島さんは「難陳になれば『縁起がよくない』と批判を浴びたはず」とみる。

出典を「初の国書」という政府の発表はどう考えればいいのか。

新元号の発表直後、多くの専門家が「梅花の歌」序文のお手本として、中国の古典である王羲之(おうぎし)の「蘭亭序(らんていじょ)」や、詩文集『文選(もんぜん)』の張衡(ちょうこう)「帰田賦(きでんのふ)」からの影響を指摘した。『古事記』『日本書紀』『万葉集』が出典だと主張しても、中国古典にさかのぼる可能性が高い。小島さんはその理由を「日本独自の元号といっても制度自体、中国から学んだもの。日本の文学は中国古典に多くを学び、発展してきた」と解説する。

小島さんの目には、「初の国書」という日本独自の歴史や文化をわざわざ強調する政府の姿勢が、大陸伝来の文化を基盤とする日本の伝統の成り立ちを軽視しているかのように映るという。そもそも大伴旅人が観梅の宴を開いた大宰府は、唐や新羅の使節が訪れて交流した場所でもある。

元号は中国や日本に限らず、「東アジアの漢字文化圏全体が共有する伝統だ」と小島さんは強調する。19世紀以降の帝国主義と革命、近代化とナショナリズムの時代を経て、いま元号の制度が残るのは日本だけとなった。「日中戦争の最中も昔の中国文明や儒教、漢詩の伝統には深い敬意が払われていた。今回の政府の説明でも、中国古典の『文選』と国書『万葉集』のダブル典拠とすれば、東アジア友好のメッセージが伝わったはずなのに」(大内悟史)

こじま・つよし 1962年生まれ。専門は中国思想史。著書に『天皇と儒教思想』『儒教が支えた明治維新』など。

公立と私立の中学校、教育費はこれだけ違う

3年間で3倍近くの差!公立と私立の中学校、教育費はこれだけ違う

 

中学生になると、公立に進んでも学校にかかる費用や塾代などが増えるため、小学校時代より教育費の負担は重くなるのが一般的。私立中学に進学すると、家計からの負担はさらに重くなります。実際にどれくらいかかるのか、まずは総額から見てみましょう。

3年間の合計では公立が約144万円、私立は約402万円

文部科学省「子供の学習費調査」(平成26年度)によると、中学校でかかる学校教育費と学校外教育費などを合わせた学習費の総額は、年間の平均では公立で約48万円、私立で約134万円。私立は公立の約2.8倍という結果です(図1・表1)。

これを学年別に見てみると、公立中学では3年生のときにかかる費用が約57万6000円と最も重く、次が入学した年の1年生で約46万2000円。3年生になると塾代などの費用がかさみ、1年のときは入学時に必要な制服などの準備品が増えるためと思われます。
一方、私立の場合は入学年度の1年生のときが約162万円で最も高く、次が3年生のときの約124万円。公立・私立ともに2年生のときの負担がやや軽くなるという状況です。

学年別にかかる費用を合計すると、公立は3年間で約144万円、私立は3年間で約402万円となり、子ども1人が私立中学に進むと、家計にとってはかなりの負担になることがわかります。そこで、公立・私立別にかかる費用の詳細を上の調査から紹介します。

公立の場合、学校にかかる費用より、学校外にかかる費用のほうが大きい

公立中学で、学校教育費としてかかる費用の平均は年に約12万9000円。月にすると1万円強なので、学校関係だけなら家計からの負担が重いというほどではありません。学校教育費の内訳で、金額の占める割合が大きいものから紹介すると次のようになっています。

○通学関係費 3万3094円・・・25.7%
○教科外活動費 3万2468円・・・25.2%
○図書・学用品・実習材料費等 2万4645円・・・19.1%
○修学旅行・遠足・見学費 2万2918円・・・17.8%
○学校納付金等 1万2055円・・・9.3%

公立の場合、学校納付金は少ないものの、電車・バスなどの交通費や、自転車通学の場合の自転車購入費といった通学関係でかかる費用が意外に大きな割合を占め、次に大きいのが教科外活動費、いわゆる部活動などの費用です。公立でも、小学校の学校教育費は年に平均6万円弱のため、中学に進むとその倍はかかることになります。

しかし、こうした学校教育費よりも負担が大きいのは、学校外にかかる教育費です。その平均額を下の図で学年別に見てください。

公立中学では、1年生のときから塾代などの補助学習費が年に15万6000円、その他の学校外活動費が8万円で、年に23万6000円の費用がかかっています。これが2年生になると27万1000円と増え、3年生では43万5000円と一気に高くなります。
3年生になると高校受験を控えて塾代などの負担が増え、家庭での教育費が重くなることがわかります。

私立は授業料を含め、学校関係の費用だけで年に約100万円

学校教育費だけを見ると、私立は公立の約8倍で、年間約102万円。そのうち、最も大きな割合を占めるのは授業料です。私立の学校教育費の内訳も見てみましょう。

○授業料 43万5917円・・・42.6%
○学校納付金等 28万614円・・・27.4%
○通学関係費 13万8669円・・・13.6%
○修学旅行・遠足・見学費 6万3707円・・・6.2%
○教科外活動費 5万5170円・・・5.4%(以下省略)

これは全国平均の金額ですが、東京都内の私立中学の学費の平均は、授業料が46万台とやや高くなっています。さらに、授業料の高い学校は最高131万円(1校)で、80万円台という学校もけっこうあり、低い学校は20万~30万円台のため、ざっと4~5倍もの開きがあります(平成28年度『都内私立中学の学費の状況』より)。
また、入学金や施設設備費も学校によって大きく異なります。

注意したいのは、私立中学では入学時に寄付金や学校債を募集する学校が多いことです。都内私立中学では半分近くが、1口数万円、もしくは5万円、10万円で2口以上といったかたちでの寄付金を募集しています。任意とはいうものの、入学者の大半は納めているようで、その平均額は約14万6000円。学校債は7校ですが、寄付金と学校債の両方を募集する学校もあります。そのため、学校に納めるお金だけで、1年目は初年度納付金に寄付金などを合わせて130万~150万円というケースも少なくありません。
私立の場合、授業料などのほかにも、このように学校によってかかる費用の違いに注意が必要でしょう。

私立の補助学習費は公立より少ないが、そのほかの費用がいろいろかかる

私立中学は学校にかかる費用が高いものの、中高一貫や大学付属の学校も多いため、そうした学校に進めば、塾代などがかからず、トータルでは公立とあまり変わらないと思っている保護者も多いようです。しかし、私立でもレベルの高い学校では、授業についていくのが厳しいために塾などに通うケースもありますし、大学は国立志望が当たり前という中高一貫の中学では、やはり中学時代から進学塾に通っている生徒もいます。
私立の学校外にかかる教育費は、下のように年30万~34万円くらいとなっています。

このほか、私立の場合は学校指定の制服や靴、バッグ、体操着なども高めで、前述のように定期代などの通学関係費は月に1万円以上。修学旅行などの行事や部活動にかかる費用も公立の2倍から3倍かかっています。私立はかなり遠くから通学する生徒も多く、休日に子ども同士で集まる際の交通費や、レジャー・スポーツを楽しむためのつき合い費や小遣いも、けっこうかかるという話はよく聞きます。

また、私立はお金持ちの子どもが多いので、「子ども同士のつき合いだけでなく、保護者同士のつき合いにもお金がかかる」という人もいますが、それは学校の校風によっても異なり、大学付属のブランド校などを除けば、すべてに当てはまるわけではありません。

ただし、中学から私立に進む場合、高校、大学も私立になるケースが多いということは忘れてはいけません。高校までなら6年間、大学まで私立に進むと最低10年間は、子ども1人につき毎年100万円以上の教育費がかかってくるということです。子どもが2人、3人となれば、その2倍、3倍に……。
それだけの費用を毎年、家計から賄えるかどうか、そうしたことも含めて、中学の進学先を検討することが重要でしょう。

文:マネージャーナリスト 光田洋子