日銀総資産500兆円、GDP並みに膨張

日銀保有による国債消化はメガバンクの40兆円台の10倍以上の水準にまで膨らんでおり、いつまでこんな状況が持つのでしょうか。国民の金融資産がある日突然毀損する時はいつかはやってくる。銀行預金が利息を生んだ時代が懐かしい。


日銀総資産500兆円、GDP並みに膨張 5月末  異次元緩和の出口難しく

2017/6/1 22:10 情報元 日本経済新聞 電子版

日銀の総資産が5月末時点で初めて500兆円を突破したもようだ。国債を大量に買い入れて市場に資金を供給しているためで、日本の名目国内総生産(GDP)にほぼ並ぶ規模となる。デフレ脱却に向けた異次元緩和の結果だが、物価目標の達成はまだ遠い。資産が膨らみすぎると、金融緩和の手じまいが難しくなると懸念する声が出ている。

中央銀行の総資産は、規模が大きいほど市場に多くの資金を供給し、金融緩和の度合いが強いことを示している。

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日銀の5月20日時点の総資産は498兆1574億円だった。その大半を占める国債が5月31日時点で2兆2414億円増えており、他の資産が大きく変化していないなら総資産は500兆円を超えたと推定される。

黒田東彦総裁が就任後の2013年4月に量的質的金融緩和(QQE)を開始して以降、総資産の伸びが加速した。日銀は16年9月に金融政策の軸足を量的緩和から金利操作に移したが、長期金利をゼロ%程度に抑えるために国債を買い入れ続けている。日銀は物価上昇率が目標の2%を安定的に超えるまで資金供給量の拡大を続けると約束しており、500兆円は通過点にすぎない。

日銀の総資産は足元でGDPの93%に相当する。米連邦準備理事会(FRB)の23%(約4兆5000億ドル)や、欧州中央銀行(ECB)の28%(4兆2000億ユーロ)と比べても大きさが際立っている。米国はすでに利上げ局面に入り、米欧とも目線は資産の縮小に向かっているが、物価上昇が鈍い日本はまだ資産の拡大が続く。

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資産規模が膨らみすぎることの問題は、それが日銀の財務を悪化させる要因になり得ることだ。金融緩和を手じまいする時に利上げをすると、日銀は当座預金にお金を預けている銀行などに高い利息を払う必要がある。日銀が大量に購入してきた国債は利回りが低いため、払う利息が収入を上回る「逆ざや」が一時的に発生してしまう。

中央大学の藤木裕教授の試算によると、2%の物価目標を達成した場合、日銀は10年以上も赤字になる。その損失が大きくて自己資本を上回ると、債務超過になってしまう。一部のエコノミストには、日銀が赤字や債務超過になると円が急落し、急激な物価高を招きかねないと懸念する声がある。

日銀内には、大きな問題はないとの意見も目立つ。利上げをするほど景気が良ければ、日銀が保有する国債もいずれは利回りが上昇する。「長期的に考えると日銀の財務の健全性に悪影響はない」(原田泰審議委員)。行内でも「債務超過に陥る可能性は低い」(幹部)との見方が主流だ。

そもそも金融緩和が長引くと、低利で国債を発行できる政府の財政規律が緩むことが問題だとする専門家は多い。

日銀が1日に発表した調査によると、債券の円滑な取引ができているかを示す指数は大規模緩和以降、低い状態が続いている。政府の財政規律に警告を発する債券市場がうまく機能していない。中長期的に財政の規律が守られる仕組みになっていないと、日銀が金融政策を手じまいする「出口戦略」の過程で、金利が急騰しやすくなる懸念もある。

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