コロナ水際対策「緩和を」6割 社長100人アンケート

政府の水際対策については「緩和すべき」が59.2%、「適切」が40%だった。緩和すべき理由(複数回答)は「外国人人材の入国が困難」(73.2%)、「海外企業の日本市場回避」(66.2%)が上位だった。

旭化成の小堀秀毅社長は「世界主要国がウィズコロナで経済正常化へ取り組む中、日本も経済活動を段階的に再開すべき」と主張する。一方で、「新たな変異型のまん延も懸念されるので現状の水際対策は適切」(凸版印刷の麿秀晴社長)とする意見もあった。

新型コロナの感染症法上の分類は現在、結核などと同じ「2類相当」で、保健所が感染者らを厳格に管理するといった対応が必要だ。東京都の小池百合子知事が1月、「5類への変更も含めて科学的知見を集めてほしい」と国に要望するなど、見直し議論が出ている。

アンケートでは「『5類』に変えるべき」が48%、「独自の位置づけにした方が良い」が35.7%だった。変更を求める理由は「保健所や医療機関の負担軽減」「経済停滞リスクの軽減」がともに87.2%だった(複数回答)。

この2年間のコロナ政策の評価も聞いた。「不十分」との回答が目立ったのは、「医療体制の逼迫解消」(63.8%)、「ウイルス検査体制の整備」(62.6%)と特に医療関係で厳しい目が向けられている。塩野義製薬の手代木功社長は「医療におけるデータ収集が不十分なことは明らか。医療のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に関し、今までにない強いリーダーシップを期待したい」とした。

一方、経営を支える政策については「適切」との評価が多かった。「税金の減免、繰り延べ」や「雇用維持のための支援」「テレワークの推進」「企業の資金繰りの支援」は8割超が適切とした。

コロナ禍を踏まえた経営の改善点としては、「DXの推進」が91%で突出し、「サプライチェーンの再構築」(49.7%)、「テレワークの推進」(35.9%)と続いた(複数回答)。帝人の鈴木純社長は「デジタル化や非効率なやり方の見直しが急速に進んだ。社会の急速な変化を的確に捉え、素早く対応できる俊敏性が一層重要になった」とこの2年間を振り返る。

男性の育休取得率「77%」 25年目標平均値

社長100人アンケートでは新制度「出生時育児休業(男性版産休)」を含めた男性の育休取得の見通しについても聞いた。2025年の取得率目標の平均値は77.8%だった。政府目標の30%より大幅に高く、大企業が男性の育児参加のけん引役となりそうだ。

4月から改正育児・介護休業法が段階的に施行される。目玉である男性版産休は、子どもが生まれてから8週間以内に4週間まで取得できる仕組みだ。政府は従来の育休と合わせて、男性の取得率を25年までに30%にする目標を掲げる。政府調査では、民間企業の取得率は20年時点で12.7%にとどまっている。

アンケートで目標値を回答したのは70社で「100%」が半分を占め、平均値も77.8%と高い。足元の取得率も回答した137社の平均で43.5%で、集計方法が違い単純には比較できないが25年の政府目標を上回る。

改正育児・介護休業法では、労使協定を締結すれば休業期間中もある程度の仕事ができる。どう対処するかについて、最多の回答は「検討中」で54.3%だった。「すでに可能にした」「可能にしたい」は計20%だった。仕事を離れる不安が和らぐ一方、「育児と母親のケアに専念してもらいたい」(積水化学工業の加藤敬太社長)という観点もあり、労使で揺れているようだ。

回答者一覧

井手博(IHI)/小堀秀毅(旭化成)/勝木敦志(アサヒグループホールディングス)/広田康人(アシックス)/西井孝明(味の素)/木藤俊一(出光興産)/石井敬太(伊藤忠商事)/片野坂真哉(ANAホールディングス)/平井良典(AGC)/森田隆之(NEC)/澤田純(NTT)/井伊基之(NTTドコモ)/大田勝幸(ENEOSホールディングス)/原典之(MS&ADインシュアランスグループホールディングス)/加来正年(王子ホールディングス)/蓮輪賢治(大林組)/鎌上信也(OKI)/山田義仁(オムロン)/吉田謙次(オリエンタルランド)/井上亮(オリックス)/保元道宣(オンワードホールディングス)/長谷部佳宏(花王)/樫尾和宏(カシオ計算機)/天野裕正(鹿島)/橋本康彦(川崎重工業)/森本孝(関西電力)/御手洗冨士夫(キヤノン)/谷本秀夫(京セラ)/磯崎功典(キリンホールディングス)/北尾裕一(クボタ)/高橋誠(KDDI)/山口貢(神戸製鋼所)/山名昌衛(コニカミノルタ)/小川啓之(コマツ)/新浪剛史(サントリーホールディングス)/深沢祐二(JR東日本)/柿木厚司(JFEホールディングス)/山北栄二郎(JTB)/好本達也(J・フロントリテイリング)/浜川一郎(JCB)/手代木功(塩野義製薬)/柴田久(頭取・静岡銀行)/魚谷雅彦(資生堂)/井上和幸(清水建設)/野村勝明(シャープ)/橋本剛(商船三井)/高橋秀仁(昭和電工)/斉藤恭彦(信越化学工業)/谷真(すかいらーくホールディングス)/鈴木俊宏(スズキ)/岩田圭一(住友化学)/兵頭誠之(住友商事)/高橋修司(セイコーホールディングス)/後藤高志(西武ホールディングス)/加藤敬太(積水化学工業)/仲井嘉浩(積水ハウス)/尾関一郎(セコム)/井阪隆一(セブン&アイ・ホールディングス)/桜田謙悟(SOMPOホールディングス)/真鍋淳(第一三共)/稲垣精二(第一生命ホールディングス)/十河政則(ダイキン工業)/相川善郎(大成建設)/北島義斉(大日本印刷)/不死原正文(太平洋セメント)/中田誠司(大和証券グループ本社)/芳井敬一(大和ハウス工業)/村田善郎(高島屋)/林欣吾(中部電力)/猪野薫(DIC)/森雅彦(DMG森精機)/石黒成直(TDK)/鈴木純(帝人)/佐藤慎次郎(テルモ)/有馬浩二(デンソー)/五十嵐博(電通グループ)/河合利樹(東京エレクトロン)/小宮暁(東京海上ホールディングス)/内田高史(東京ガス)/島田太郎(東芝)/永松治夫(東洋エンジニアリング)/竹内郁夫(東洋紡)/日覚昭広(東レ)/清田徳明(TOTO)/麿秀晴(凸版印刷)/高崎裕樹(名古屋鉄道)/馬立稔和(ニコン)/石塚忠(日揮ホールディングス)/見目信樹(日清製粉グループ本社)/高崎秀雄(日東電工)/茅本隆司(ニッパツ)/斎藤充(NIPPON EXPRESSホールディングス)/山口明夫(日本IBM)/小林茂(日本ガイシ)/赤坂祐二(日本航空)/浜田晋吾(日本水産)/市井明俊(日本精工)/野沢徹(日本製紙)/橋本英二(日本製鉄)/清水博(日本生命保険)/寺畠正道(日本たばこ産業)/関潤(日本電産)/日色保(日本マクドナルド)/長沢仁志(日本郵船)/大谷和彦(ニュー・オータニ)/古川俊太郎(任天堂)/奥田健太郎(グループCEO・野村ホールディングス)/楠見雄規(パナソニック)/小島啓二(日立製作所)/柳井正(ファーストリテイリング)/山口賢治(ファナック)/細見研介(ファミリーマート)/時田隆仁(富士通)/後藤禎一(富士フイルムホールディングス)/佐々木一郎(ブラザー工業)/石橋秀一(CEO・ブリヂストン)/三部敏宏(ホンダ)/丸本明(マツダ)/青井浩(丸井グループ)/柿木真澄(丸紅)/水野明人(ミズノ)/木原正裕(みずほフィナンシャルグループ)/橋本修(三井化学)/太田純(三井住友フィナンシャルグループ)/堀健一(三井物産)/菰田正信(三井不動産)/細谷敏幸(三越伊勢丹ホールディングス)/ジョンマーク・ギルソン(三菱ケミカルホールディングス)/吉田淳一(三菱地所)/泉沢清次(三菱重工業)/垣内威彦(三菱商事)/京谷裕(三菱食品)/漆間啓(三菱電機)/小野直樹(三菱マテリアル)/亀澤宏規(三菱UFJフィナンシャル・グループ)/中島規巨(村田製作所)/川村和夫(明治ホールディングス)/長尾裕(ヤマトホールディングス)/中田卓也(ヤマハ)/高原豪久(ユニ・チャーム)/三木谷浩史(楽天グループ)/山下良則(リコー)/竹増貞信(ローソン)/松本功(ローム)/安原弘展(ワコールホールディングス)

(肩書は3月25日時点。敬称略、肩書のない経営者は社長、社名で五十音順)

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