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がん5年生存率のその後 驚異的上昇が続く

バックデータは2006~08年

昨年末、国立研究開発法人国立がん研究センターは、全国がんセンター協議会(会長:中釜 斉、以下、全がん協)の協力を得て、加盟32施設の診断治療症例について部位別5年生存率、10年生存率を集計し、全がん協ホームページで公表(2021年11月10日)している(但し2011から2013年症例だ。凡そ、10年遅れでしか出てこないことは、いかに統計処理が遅れているかを物語っている)。

6年前の掲載記事では、がん5年生存率62.1% ゆるやかに向上でしたが、全部位全臨床病期の5年相対生存率(病期不明症例を含む全症例)は5年間に68.9%でした(6.8%上昇)。オレンジ色の下記文字部位が退行している部分です。前回記事と比較してみれば解りますが、2000年当時の56%とくらべて飛躍的な向上をしている。食道ガンは33.2から50.1のように。現在の推計値は同じ傾向トレンドで伸ばしてみると、1.36*(2022-2013)+68.9=81.14%と驚異的レベルにきているようだ。人口構成の固まりが最多を占める団塊の世代の政治的責任は、客体で無く、主体として行動する時ではないだろうか。

医療科学の進化の恩恵を受けることは超高齢化の促進でもあり、有り難く今を生きる人たちは日々感謝の気持ちを忘れてはいけない。今を生きることは未来へのツケを回すということでもあり、未来、子孫のために出来ることを考えてみることが必要だろう。人は社会的動物であり、コロナ禍を理由とした非科学的な行動制限、ソーシャルディスタンスは、個人の思考能力の停止化の危険性を胎んでいる。孔子が言った、學びて思はざれば則ち罔(くら)し。思ひて學ばざれば則ち殆(あやう)し。に準えるならば、「言われたとおりに振る舞い、自分で考えることが少ないと道を誤る。考えてばかりで、人の道を学ばないようだと、危険この上ない」ということです。

注:数値は部位別の病期不明症例を含む全症例の5年相対生存率
注:( )内の数値は、2010年から2012年症例の5年相対生存率

  • 全部位 68.9%(68.6%)
  • 食道 50.1%(48.9%)
  • 胃 75.4%(74.9%)
  • 大腸 76.8%(76.5%)
  • 肝 38.6%(38.1%)
  • 胆のう・胆管 28.7%(28.9%
  • 膵臓 12.1%(11.1%)
  • 喉頭 80.4%(82.0%)
  • 肺 47.5%(46.5%)
  • 乳(女) 93.2%(93.6%)
  • 子宮頸 75.9%(75.7%)
  • 子宮体 86.2%(86.3%)
  • 卵巣 64.3%(65.3%)
  • 前立腺 100.0%(100.0%)
  • 腎臓など 71.0%(69.9%)
  • 膀胱 67.7%(68.5%)
  • 甲状腺 93.0%(92.6%)

主な部位別のがん「5年生存率」(%、年は診断された年)
2000~02年/03~05年/06~08年

◇口腔(こうくう)・咽頭(いんとう)
54.6/54.3/60.2
◇食道
33.2/33.7/37.2
◇胃
64.3/63.3/64.6
◇大腸
68.4/69.2/71.1
◇肝臓
27.1/27.9/32.6
◇胆囊(たんのう)・胆管
21.8/21.1/22.5
◇膵臓(すいぞう)
5.5/ 7.0/ 7.7
◇喉頭(こうとう)
77.8/75.9/78.7
◇肺
29.0/29.7/31.9
◇皮膚
90.9/90.9/92.4
◇乳房
87.7/89.1/91.1
◇子宮頸部(けいぶ)
72.2/72.2/73.4
◇子宮体部
79.2/79.8/81.1
◇卵巣
53.3/55.0/58.0
◇前立腺
84.6/93.8/97.5
◇膀胱(ぼうこう)
77.2/73.5/76.1
◇腎臓・尿路
65.4/65.7/69.1
◇脳・中枢神経系
32.7/32.6/35.5
◇甲状腺
92.1/92.2/93.7
悪性リンパ腫
54.6/58.7/65.5
多発性骨髄腫
29.0/32.6/36.4
白血病
32.1/37.3/39.2
◇全体
56.9/58.6/62.1
(対象者は00~02年が15万4022人、03~05年が19万404人、06~08年が64万4407人)

ロスジェネと高齢者

ロスジェネの問題は高齢者の問題でもある。行政のスリム化と高齢者の身を切る改革無しには解決に向かわないだろう。掛け金の倍以上の給付を受けている実情には無理があろう。

2019.527 朝日(ロスジェネはいま エイジングニッポン:中)遠い結婚、少子・高齢単身


自分たちの世代が生きていくすべとして、結婚を焦っていたのかもしれない。関東地方に暮らし、中小企業でパートとして働く46歳の女性は思う。

東京・世田谷の閑静な住宅街に住み、専業主婦になり、子どもには海外留学をさせて――。そんな夢を持って33歳の夏に結婚情報サービスに入会した。「医師・歯科医、東大早ログイン前の続き慶卒、年収1千万円以上のいずれか」という「ハイスペック男性」コースで、入会金は男性より高く30万円ほどだった。

就職氷河期に社会に出た世代「ロストジェネレーション」。30歳を過ぎて母親が亡くなり、都内の家賃5万円弱のアパートで一人暮らしをした。派遣社員として企業のデータ入力作業をし、正社員並みに働いたが手取りは月20万円台前半だった。結婚は「豊かな生活へジャンプできる大きなチャンス」だと思った。

紹介された医者や経営者2、3人と会ったが、本当に楽しいと思える人はいなかった。結局、飲み会で知り合った年下の自営業の男性と40歳で結婚したが、セックスレスになり、価値観の違いにも気づいた。いまは離婚を考えている。

「男性に高い条件を求めていた当時は、『結婚を夢見る夢子ちゃん』だったのかもしれません。いまも独身の友達は多く、私のように子どもがいない夫婦もたくさんいる。早く結婚して子どもをつくるのが当然だった親の世代とは、家族のあり方が変わっています」

国内の婚姻件数は、ほぼロスジェネの親に当たる団塊世代が25歳前後だった1970~74年にかけ、年間100万組を超えていた。それが右肩下がりとなり、2017年には半分近い60万組に減った。50歳まで結婚したことのない「生涯未婚率」は、15年の国勢調査をもとにした分析では男性で約4人に1人、女性で約7人に1人になった。

ロスジェネは、団塊ジュニアや第2次ベビーブーマーといわれる大きな人口の膨らみを含む。この世代を不安定雇用に追い込み、加えて非婚化が進んだことで、第3次ベビーブームは起きなかった。

ロスジェネ世代でもある作家・活動家の雨宮処凛(かりん)さん(44)は、この世代の女性たちは「社会から見えにくい存在」だと言う。「昭和の日本では非正規雇用の女性も結婚することで家族に吸収されていた。今は1人で生きなければいけない女性が増えており、私も友人たちも、結婚せずに老いていく現実を突きつけられている」

■ひきこもり憂慮

少子化と同時に進むのが単身世帯の増加だ。山田昌弘・中央大教授(家族社会学)は、この世代が年を重ねて高齢単身者が増えることにより、社会的孤立が深刻化すると警鐘を鳴らす。

「男性は正社員のルートから外れたら、女性は正社員と結婚できなかったら、将来が描けない。ロスジェネの親の世代までは、配偶者や子が介護などの面倒をみたが、これからは頼れる人がいないまま高齢になる人が増えていく」

懸念されるのが、仕事や社会参加をせずに孤立する「ひきこもり」だ。40~64歳の中高年ひきこもりが全国に約61万人いるという衝撃的な推計を内閣府が公表したのは3月末だった。

中高年のひきこもりが社会問題として注目される背景には、人口規模の大きいロスジェネ世代が30代後半から40代後半にさしかかっていることがある。長くひきこもる40~50代の子どもを、70~80代の親が支える。いわゆる「7040問題」「8050問題」の深刻化もまた、この世代がかかわっている。

「労働環境の悪化もひきこもり増加の理由になっているんじゃないか」。昨年9月に都内であった「ひ老会」(ひきこもりと老いを考える会)のミーティングで、さとう学さん(41)は熱を込めて話した。ひ老会はひきこもりの高年齢化に直面する当事者や経験者らが集い、語り合う場だ。

さとうさんは計20年近いひきこもり経験がある。30代のとき、ひきこもりから脱して働いたパート先の会社で、自社商品の買い取りを強いられる「自爆営業」やパワハラの被害にあった。約5年で退職し、再びひきこもった。そんな自身の経験をふまえて言う。

「ひきこもりの中高年が働き始めたとして、そこに希望はあるのか。結婚もできず、給料もあがらず。それに耐えられるのか」

ロスジェネ世代の高齢化は、この国に大きな重荷を背負わせる。

■国も大きな負担

団塊の世代が75歳以上になる2025年問題はよく知られているが、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、65歳以上人口が最も多くなるのは42年、75歳以上人口のピークは54年だ。ロスジェネが超高齢社会の主役となる時期と重なる。

非正規化が進み無業者が増えたロスジェネ世代について、老後に生活保護を利用する人が増えることによる追加費用は17・7兆~19・3兆円に達する。そんな推計を08年にNIRA総合研究開発機構がはじき出している。

「高齢者の数を減らさなければ、この国の未来はありません」。昨年秋、75歳以上の貧しい高齢者に国家が安楽死を勧める10年後の日本を描いた短編映画が公開された。タイトルは「PLAN75」。オムニバス映画「十年 Ten Years Japan」の第1編だ。是枝裕和監督が総合監修した。

劇中では、テレビCMが「あなたの決断を全力でサポートします」「痛みや苦しみは一切ありません」と穏やかに安楽死を勧める。

「PLAN75」を撮ったのはロスジェネ世代の早川千絵監督(42)である。きっかけは、障害者施設の入所者19人が殺害された「やまゆり園事件」で感じた、命を選別するような社会の空気への憤りだった。

「このまま進んだら社会はどうなるのか、映画で提示したかった」と早川さんは言う。「不安定な非正規雇用で働いてきた人が年金を減らされ、自分でなんとかしろと放り出されたら、この映画のようなことはありうると思います。そうならない未来への希望も持っていますが」

ロスジェネ世代が高齢化する未来は静かに、刻一刻と、近づいている